盛岡大学・盛岡大学短期大学部

イタリア書道ワークショップ(2019年11月18~20日)

イタリア北部の町ボローニャの丘の上にあるL小学校で、書道のワークショップをおこないました。講師は、ご自身も書家で国語科教育や書写・書道教育をご担当の本田容子准教授(写真中)です。私は先方との連絡、物品の準備、通訳を務めました。盛岡大学研究助成を得て実現したもので、この後、両者で分析や研究報告もおこないます。3年生から5年生の計4クラスで1回ずつ、各2時間のワークショップを全4回実施しました。各クラスの担任2名ずつ、8名の先生方にも並々ならぬご協力を得ました。掲載の写真は当日の様子です。さまざまな幸運に恵まれたワークショップ、以下に経緯をご紹介します。

一つ目の幸運は、主催者のバルバラ・キアーリさん(写真下)です。アフリカ等で難民支援に携わってきた方で、現在ボローニャで別の仕事をしながら移民難民支援及び文化交流のNPOを運営しています。彼女はL小学校に通う児童の保護者でもあり、子どもが在籍する5年間のうちにL小学校で国際文化交流をおこないたいと、校長先生を説得して新プロジェクト「多文化の種」を発足させました。ボローニャに住む外国出身の人々を呼び集めて市内の多文化を紹介するプロジェクトです。今回は彼女が、学校との連絡や、事前に郵送した荷物の関税手続き、保護者らへの撮影許可等の世話をしてくれました。

1年半ほど前、私はイタリアの友人を介して本プロジェクト参加の打診を受けました。インターカルチャー(文化と文化の間)に関する文化事業や難民の法廷通訳にも携わる人で、数年前に私が留学していた頃から主要な調査インフォーマントで友人です。バルバラさんは町じゅうの関係者を訪ね、ほどなく彼にたどり着きました。彼がいなければ、住民でない私が多文化ボローニャの片鱗として巻き込まれることはなかったでしょう。じつは2年前、私が全く別件の調査でL小学校を訪れていたことを覚えていてくれました。

もう一つの幸運は、筆です。ちょうど考え始めた頃に、岩手日報デジタル版で奥州市の文秀堂が50年ぶりに水沢筆の製造を再開したとの記事をみつけました。「普段使いの実用筆」、全て動物毛(太筆は芯に馬天尾と狸・化粧毛に羊毛)&手作りとのこだわりで1本¥1000(学校割引有)。よいお土産になると、すぐに電話をして60本を作っていただきました。

まもなく髙橋社長から電話があり、なぜ突然、こんな量注文が入ったのか話をききたいとのことでした。今回は単発だし、ご足労だからとお断りしたのですが、ついでがあるからと盛岡でお話を聴かせていただくことになりました。今般の筆づくりは、お孫さんが小学校に上がられるので自分たちの筆を使わせたいとの一心で始められたそうです。現在、ほとんど同じ価格帯で出回っている筆は外国産でプラスチックなど合繊毛です。いざ家業を復活させるというときに、なぜ高級路線にしなかったのか、こちらの謎も解けました。

そして本田先生が、すでに海外でのワークショップ経験をお持ちであったこと、すぐに現地の先生方や子どもたちの様子を捉えて臨機応変にご対応くださったことも幸いしました。子どもたちとの息はぴったり、無駄なくリズムや呼吸を伝えてくださっていました。子どもたちのコメントには「幸せな緊張感」、「日本語も心地よかった」といった感想もみえました。主催者のバルバラさんによると、事後には保護者の方々からも嬉しいコメントやムービーが殺到したそうです。ひとえに、本田先生のご指導力の賜です。

最後になりましたが、本学事務局の方々にも、通常の出張手続きとは異なるご無理を申し上げ、煩雑な事務処理を、いつも迅速に、きめ細やかにご対応いただきました。盛岡大学研究助成に感謝しつつ研究成果報告に務めます。いろいろな思い、行動、出会いが最初は偶然に重なり合いながら時間をかけて網の目になりました。ここに蒔かれた「多文化の種」が、子どもたちの中でどのように育ちひらいてゆくのか楽しみです。

冒頭のデモンストレーションを食い入るようにみつめる子どもたち

冒頭のデモンストレーションを食い入るようにみつめる子どもたち

子どもたちと一緒に画数を数えながらリズムを伝える本田容子先生

子どもたちと一緒に画数を数えながらリズムを伝える本田容子先生

自分の作品をみてうれしそうな児童と本田先生

自分の作品をみてうれしそうな児童と本田先生

言われなくても、練習、練習。子どもたちです。

言われなくても、練習、練習。子どもたちです。

おみごと!本学の学生たちが作ってくれた落款も映えます!

おみごと!本学の学生たちが作ってくれた落款も映えます!

主催者のバルバラさんと筆者

主催者のバルバラさんと筆者

(文責:児童教育学科 助教 髙橋 春菜)
※写真は掲載の許可を取っています。転載は固くお断りします。