盛岡大学・盛岡大学短期大学部

対談特集

地域と大学がともに描く未来像

――滝沢市 武田哲 市長 × 広報・社会連携センター所長 千葉智行 教授 対談

滝沢市が掲げる「若者が活躍するまちづくり」。
そして、盛岡大学・盛岡大学短期大学部が長年取り組んできた「地域とともにある学び」。

若い世代が地域に根づき、地域が若者を育てる。
そんな未来をどのように行政と大学がともに描いていけるのか。
滝沢市の武田市長と、本学の広報・社会連携センター所長・千葉教授が語り合いました。

滝沢市長

武田 哲

(たけだ さとる)

2011年に滝沢市(当時滝沢村)議会議員、2019年に岩手県議会議員を経て、2022年11月より滝沢市長を務める。

文学部 
社会文化学科教授

千葉 智行

(ちば ともゆき)

盛岡大学 文学部社会文化学科教授。専門は体育学(バレーボール)。広報・社会連携センター所長を兼務。

若者が活躍するまちづくりと、大学の新たな役割

千葉

本日は、武田市長と「地域と大学がともに描く未来」をテーマにお話しできることを大変うれしく思います。まず、滝沢市が「若者が活躍するまち」を掲げ、「若者活躍推進室」を立ち上げた背景から伺えますか。

武田市長

滝沢市は岩手で最も平均年齢の若いまちです。市内には盛岡大学・盛岡大学短期大学部、岩手県立大学があり、4,000人以上の学生が学んでいます。若い人たちがこの滝沢で過ごす大切な時期に「どんな経験ができるか」。その経験が、自信や地域への愛着につながると考え、若者が挑戦しやすい環境づくりを進めています。

千葉

大学にとっても、「地域課題の解決に貢献する学び」はますます重要になっています。今年度から広報と地域連携を一つのセンターに統合したのも、その流れを加速するためです。地域のニーズに応える学びを可視化し、学生の活動が地域に届くように情報発信を強めています。

武田市長

行政だけではできないことがたくさんあります。大学と連携することで、若い視点がまちに入ってきて、地域の空気が変わる。とてもありがたく感じています。

地域と若者の化学反応が生む「育つ循環」

千葉

市長は、学生が地域にもたらす力をどのように感じていますか。

武田市長

地域の行事に来てくれた学生が、卒業後も地元のお祭りや自治会に顔を出し、消防団にも入ってくれている例があります。自分が地域に必要とされている、役に立てると実感できたからこそ続けてくれているのだと思います。

教育実習でも、滝沢東小学校に来た盛岡大学の学生が地域の方に名前で声をかけられ、「絶対滝沢で教員をやりたい」と心を決めたという話もありました。地域が若者を育て、その若者がまた地域に貢献する──まさに理想的な循環です。

千葉

本学でも、授業アシスタントや行事サポートなどへ学生を派遣しています。教育実習以外に学校を見る機会が増えることで、教職を目指す気持ちがより強まるようです。県内就職が6割を超えているのも、地域と関わる学びがあるからだと感じています。

武田市長

昨年度から始まった大学のリカレント教育講座も、とても大きな成果を出しています。「発達障害」や「障害児教育」の講座は受講者が多く、学びたいという市民の気持ちが伝わってきました。

その学びが後押しになり、滝沢市では今年度から5歳児健診を導入しました。早期から環境を整えることで、子どもたちの成長を支えたいと考えています。しかし、健診で運動機能を見ると、ケンケンパができない子が想像以上に多い。この課題には、大学と連携しながら改善のための取り組みを広げていきたいですね。

千葉

リカレント教育は、大学が持つ専門性を地域へ還元できる大切な機会だと感じています。
講座を通じて市民の皆さんの声やニーズを知ることで、行政の施策にも反映され、それがまた大学の教育や研究へと戻ってくる。この循環こそ、地域と大学がともに育つための大きな財産です。地域課題の解決に貢献することは、大学の使命の一つとして今後も大切にしていきたいですね。

若者と地域が描く未来像――挑戦の時代へ

千葉

これからの滝沢市と大学の協力が提示する未来像とは、どんなものだとお考えですか。

武田市長

これからの地域づくりには、若い世代ならではの新しい視点や挑戦が欠かせないと感じています。自治会の運営や地域行事も、学生さんのアイデアが入ることで、これまでにない形が見えてくるのではないでしょうか。

滝沢市には大学近くにイノベーションセンターがあり、IT企業が30社ほど入っています。そこで「文学部の学生はプログラミングに向いている」という声をいただきました。論理構成が物語づくりと似ているからでしょうね。学生さんには、地域をフィールドに新しい挑戦をしてほしいと期待しています。

千葉

学生はどうしても受け身になりがちですが、若いうちの失敗はすべて"学び"です。大学としても、学生が動き出しやすい仕組みをもっとつくりたいと思っています。

近隣の自治会の方々が雪かきの依頼で学生を呼んでくださることもありますが、そこで生まれる交流が、互いへの理解や自分の得意を見つけるきっかけになっています。こうした"地域で育つ学び"を大切にしていきたいですね。

地域と大学がひらく「これから」

武田市長

滝沢市では、学生アルバイトの受け入れや、やりたいことに最大15万円を支援する若者応援補助金、学生の「想い」をかたちにする「滝沢ミライプロジェクト」も行っています。挑戦する学生を全力で応援します。盛岡大学の学生の皆さんには、ふるさとをどうしたいかという視点でまちを見つめ、失敗を恐れずに挑戦してほしいですね。

千葉

本学は「地域に根ざした大学」として歩んできました。大学での学びを地域に還元し、卒業後は地域の人材として活躍できる、その力を育んでいきたいと思っています。これからも滝沢市とともに、若者が育ち、地域が育まれる循環を広げていければと願っています。

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